下山ワタル|ピーグラフ

2005: THE BEST

:::本:::

オヤジ国憲法でいこう!
しりあがり寿+祖父江慎(理論社→イースト・プレス)

しりあがり寿と装幀家の祖父江慎による共著。「個性は捨てるためにあるものである」「自分の傷は、これを無視する」「友達とは、寂しさを補うだけのものである」「お父さんは家族を守れません」…など、オヤジの二人がヤングたちに捧げる馬鹿馬鹿しさたっぷりの憲法、のふりをした一種の哲学書。

「ヤングよ」と問いかけるユーモラスな文体の合間に、“自分とは違う考え、違う立場の発言に対して「正しいか/間違っているか」の二つの反応しかできないというのは、自分の理解の外側にも世界があるということを認められない、ということじゃないか”といった、ずしっと来る言葉の数々がひそんでいる。こう見えてもナイーブで傷つきやすい人間なので、「自分の傷にもっと鈍感に」みたいなメッセージはとても役に立った。「自分探し」でなく「自分忘れ」を…。ぼくがいま毎日の仕事で実感しているのも、まさにそんな境地。さすが静高出身=しりあがり寿。しりあがりさん風キャラクターの挿画を、実は100%ORANGE及川賢治さんが描いているのも見どころ。

他にも…
13歳は二度あるか -「現在を生きる自分」を考える
 吉本隆明(大和書房)
Tokyo TDC, Vol. 16(トランスアート)
ディスクパッケージデザイン 大橋二郎・編(翔泳社)
 

:::雑誌:::

Intersection
(Intersection Magazine)

2005年は『Intersection』がぶっちぎり(車の雑誌だけに)。毎号欠かさず買い続けたのはこれと『広告批評』だけ。世界一スタイリッシュでウィットに富んだカー雑誌、を超えるファッション誌。デザイン、編集共にこれほどまでハイレベルな雑誌を見たことがない。不況から脱出しつつある時期だからか(いまのぼくにはまったく実感できないけど)たくさんの新雑誌が創刊された一年だった。けれど、ぼくの目に止まったのは、編集の基本がきちっと押さえてあっていつの時代にも通用するような、質実剛健を貫くものが多かった。

他にも…
Quick Japan 特集:結婚、特集:ラジオ (太田出版)
CONTINUE (太田出版)
Wandel (山と渓谷社)
広告批評 (マドラ出版)
 

:::アート:::

和田誠のグラフィックデザイン
(銀座=ギンザ・グラフィック・ギャラリー

広島で観た「絵本の仕事」展も素晴らしかったけど、グラフィックデザインの仕事に焦点を当てたこの展示はいろんな意味で励みになった。「デザインはあくまで人のためにあり、限りなく縁の下の力持ちだから、自己主張しないもの」という和田さんの姿勢は、gggの展覧会を観たときにも書いたが、ぼくのデザインに対する考え方と通じるものがある。必要だからそこにあるデザイン。器としてのデザイン。一芸に秀でるよりは多才/多彩。和田さんのように成長していけたらいいなといつも思う。

他にも…
和田誠の絵本の仕事
 (広島=ふくやま美術館)
カフェばか日誌 そしてsonesについての展覧会 (原宿=Pater’s Shop and Gallery)
チャールズ&レイ・イームズ 〜創造の遺産〜 (目黒=目黒区美術館)
ポーランドの映画ポスター (京橋=東京国立近代美術館フィルムセンター)
 
 

:::音楽:::

ランラ
ケロポンズ(カエルちゃん

幼児教育の世界で人気のケロ(増田裕子)とポン(平田明子)のユニット=ケロポンズが、ハナレグミの宅録『帰ってから、歌いたくなってもいいようにと思ったのだ。』に影響を受け、初めて自分たちでアレンジを手がけた手作り感あふれるアルバム。おもちゃの楽器や手作り楽器を使ってほとんど一発録りでレコーディング。ハナレグミやTHE BOOM『JAPANESKA』(特に「夜道」)、たまあたりにまで通じる中央線フレーバーが漂う、シンプルでいてとても懐の広い作品。

このほかによく聴いたのは、ザ・コレクターズの2004年の傑作アルバム『夜明けと未来と未来のカタチ』。男女の愛や政治のことを、シンプルでまっすぐな言葉で歌うことのできる、こんな大人がうらやましい。ピチカート・ファイヴのロック版とでもいうべきサロン・ミュージック吉田仁によるアレンジが秀逸。リリー・フランキーもジャケット・イラストでいい仕事している。

ライブは、バンコクで観たKiiiiiii@FAT FEST FIVE、ロックフェス初体験のRISING FES.(北海道)で観たフィッシュマンズと忌野清志郎と電気グルーヴ×スチャダラパーetc.、宮島で観たTHE BOOM/宮沢和史が心に残る。3カ所に共通するのは「場」がもたらすパワーのすごさだった。
 

 
:::キーワード:::

“ダンス”

2005年は金森穣主宰のイベント等で、コンテンポラリー・ダンスの魅力に初めて触れた年だった。某所での肩書きは“ダンサー”。なのに、昨年中はついにダンスを習う夢は果たせず。今年はぜひ習いに行きたいし、観る方も4月に行く予定のコンドルズをはじめいろんなダンスや動く芸能を楽しみたい。

2004年のキーワードの“映像”もそうだけど、日頃静止した状態で物事を考えることが多いゆえ、動くもの〜動かすこと、に対する憧れが強いみたい。こういうブログみたいなことをやっていると、頭の中ではいくらでも考えを広げることができてしまう。好きなことが言えるし、ついつい普段の自分よりカッコいいことを口走ってしまうこともしばしば。ふう。そこで、頭でっかちになりがちな思考に対するストッパーとしての“肉体”をちゃんと並置しておきたいというか…。たぶんぼくがダンスを始めたとして、頭でイメージしているようには上手く踊れないと思うのだ。そこが逆に面白いんじゃないかと。

肉体からはじまる思考、ダンスからはじまるデザインというものがあるような気がしている。ぼくの場合、それはグルーヴィジョンズが制作したHALFBY「RODEO MACHINE」のMVみたいな……。
 

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