:::音楽:::
Reassamblage Visible Cloaks
Colors Beck
Drunk Thundercat
Jersey Devil Ducktails
Somi Taylor Deupree
The Beautiful Game Vulfpeck
Mellow Waves Cornelius
⑮Thank you, too モーニング娘。’17
Automaton Jamiroquai
Finding Shore Tom Rogerson with Brian Eno
音楽に関しては大豊作だった一年。沢山辛いことがあったけど、音楽と人に救われました(雑誌の名前じゃなくて)。
Visible Cloaks『Reassamblage』
ポートランド在住のユニット。レイ・ハラカミと同様、彼らにしかない音色と独特の間・余白があって、坂本龍一『エスペラント』を想起させるような「和」への理解も感じられる(dip in the Pool/甲田益也子がゲスト参加)。この作品を聴いている間は、“聴く”というより、自分自身もこの作品の一部になってしまいます。
⎯⎯ インタビュー|MASSAGE
Thundercat『Drunk』
ジャケットと音の印象が全く違っていて、キャッチするのに少々時間がかかってしまった。ぼくがこれまでに愛してきた音楽の要素がぎゅっと詰まっています。これまでにどんなタイプの音楽を聴いてきましたか?と尋ねられたら、このアルバムを一枚渡すだろうと思います。
⎯⎯ インタビュー|ele-king
Vulfpeck『The Beautiful Game』
Suchmosなどのミュージシャンがフェイバリットに挙げていた、本国では昨年末に発売されたアルバム(日本では春に発売)。アメリカ人の琴線に触れるようなポップなメロディを、超人的なテクのバンド・サウンドで聴かせる若手グループ。ジャクソン5とプリンスとスティーリー・ダンが同居したようなファンク。
Cornelius『Mellow Waves』
Corneliusと小沢健二が同じ年に数年ぶりの新作をリリースし、同じロックフェスの隣のステージでライブを行うという、惑星直列のような年でした。ヴォーカル/歌を主体に、アルペジオとかアコースティックな要素を最新の電子デバイスでシミュレートしていて、アヴァンギャルドなのに耳に優しい不思議なアルバム。
⎯⎯ インタビュー|美術手帖
モーニング娘。’17『⑮Thank you, too』
3年ぶりのアルバム。つんくの新作を中心に良曲が揃った。コンサートに行くとプラチナ期の曲がいまなおメインの位置を占めていることがわかるけど、今作はプラチナ期のいわゆる“辛気臭い”メロディをEDM以降の音色で構成した〈プラチナ×EDM〉的なテイスト。
⎯⎯ インタビュー(工藤遥&野中美希)|Billboard JAPAN
ここに入れてない次点的な作品としては、ONIGAWARA『ヒットチャートをねらえ!』、ハウス/テクノクリエイターYaeji(イェジ)のEP、Okada Takuro『ノスタルジア』、ドレスコーズ『平凡』、etc…。サニーデイ・サービスの前作『Dance To You』は大評判だった昨年に聴き逃し、今年に入ってから毎日のように聴いていました(『Popcorn Ballads』は来年のお楽しみ)。小沢健二の「流動体について」はアルバムの発売を待ってから。
:::アート:::
池田学展「誕生」 (市ヶ谷=ミヅマアートギャラリー)
中林忠良×CORNELIUS Mellow Waves展 (恵比寿=KATA)
写真家 ソール・ライター展 (渋谷=Bunkamuraザ・ミュージアム)
片山正通的百科全書 (初台=東京オペラシティアートギャラリー)
単色のリズム 韓国の抽象 (初台=東京オペラシティアートギャラリー)
柳本浩市展「アーキヴィスト ー 柳本さんが残してくれたもの」 (自由が丘=six factory)
芹沢銈介と沖縄 ー明るく、静かで、深いものー (静岡=静岡市立芹沢銈介美術館)
後藤美月「おなみだ的〇〇点」 (原宿=シーモアグラス)
The Pen(日本橋タカシマヤ)が大混雑で観られず残念だった一方で、最も観たかった「誕生」を、家族と、一人で、じっくり隅々まで観ることができたのは幸せでした。長い時間をかけて水の雫が岩を穿つ様子にも似た作品でした。
中林忠良×CORNELIUS Mellow Waves展。Corneliusの10年ぶりのアルバムを飾った小山田圭吾の伯父さんによる銅版画と、川越市立美術館の動画で見た、ひとつの作品を作るプロセスの途方もなさに触れて、自分も一生寄り添える表現を目指してみたいと思いました。
:::メディア:::
:::本:::
渋谷音楽図鑑 牧村憲一・藤井丈司・柴那典(太田出版)
小沢健二の帰還 宇野維正(岩波書店)
:::雑誌:::
美術手帖 17年10月号 特集:新しい食(美術出版社)
:::テレビ:::
稲垣・草彅・香取 3人でインターネットはじめます『72時間ホンネテレビ』(Abema TV)
『渋谷音楽図鑑』は、「渋谷系」のような矮小な枠組を飛び越えて、牧村憲一氏のバイオグラフィとその足跡に生まれた数々の音楽に、渋谷の都市論が交差するスリリングな論評でした。牧村さんの新しいプロジェクト「緩やかなレーベル」に関われたことは、嵐のようだった2017年の中でも喜ばしい出来事のひとつでした。
『小沢健二の帰還』は、ひとりの音楽家の空白期を丁寧に追うことにより、活動期ではない時期(出産、病気なども含む)をどう過ごすか、という、人間一般における「空白期」そのものについての論考にもなっていたと思います。そういえば「72時間ホンネテレビ」も「空白」と「帰還」にまつわる一大ドキュメント、でした。
2017年に空白期を経て本格的に「帰還」を果たした人々(自分調べ):小沢健二、のん、道重さゆみ、新しい地図(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)、稲場愛香、etc…。まだ帰還してない、もう二度と帰還できない人々にも一輪の花を。
:::ハロプロ楽曲大賞’17:::
1位|若いんだし! モーニング娘。’17
2位|Windows ハロプロ研修生(つばきファクトリー)
3位|To Tomorrow ℃-ute
4位|ジェラシージェラシー モーニング娘。’17
5位|アイドル卒業注意事項 カントリー・ガールズ
次点|
就活センセーション つばきファクトリー
Fiesta! Fiesta! Juice=Juice
リアル☆リトル☆ガール ハロプロ研修生北海道
true love true real love (とぅるらとぅるりら) 道重さゆみ
⎯⎯第16回ハロプロ楽曲大賞’17
1位の「若いんだし!」は、つんく×ヒラショーがトロピカル・ハウスに取り組み、本場のレベルを追い抜いてしまった曲。2位の「Windows」は演劇女子部『ネガポジポジ』の劇中歌で、研修生時代の加賀楓の歌唱だと思われる(クレジットなし)。娘。加入でごく普通のハロメンになってしまったかえでぃーの神がかりな卒業認定曲(違ってたらゴメン)。ハロプロ楽曲らしからぬ「ルビーの指環」オマージュなシティ・ポップスとしても魅力的。3、4位はどちらも、いかにもつんくらしい上品なディスコ・ナンバー。詞・曲ともにつんく絶好調の年でした。
推しメン部門|小関舞(カントリー・ガールズ)
ハロステのご褒美企画で、おぜこが舞美と「16歳の恋なんて」を歌った日に誰もが包まれたであろう、あの幸せな気持ちがその後もずっと続くのだと信じていました……。
ゴシップ的な情報や事務所の裏事情など知る由もない音楽好きのひとりとしては、あくまでも音楽そのものからしか推し量ることができません。今年の5位に挙げたカントリー・ガールズ「アイドル卒業注意事項」は、さだまさし「関白宣言」と並ぶ(観客の笑い声が入っている点で一致)、昔懐かしい70年代フォーク/ロック臭が漂う、アップフロントというより前身のヤングジャパンが好みそうなノベルティ〜企画ソングの極地でした。カントリー・ガールズは、60’sポップスやR&Rなど大人好みの路線に寄せすぎて、コンセプト的に身動きが取れなくなってしまったのではないか、と。
思えば、つんくプロデュース時代のカントリー娘。は、フォークや古き良きポップスの要素を取り入れつつも、トランス風なアッパー・チューン(「浮気なハニーパイ」「革命チックKISS」etc…)を適度に織り交ぜ、時流と上手くつながっていた。カントリー・ガールズにとっても、カン娘。のレパートリーがあることはいろんな点で強みでした。
いっそ嗣永桃子卒業後のカントリーも、昔と同じようにモーニングから主力メン(牧野と横山、とか)を迎えて、しれっと路線変更する手もあったのかもしれません。しかし黄金期だった当時とは違って、上位のグループにそこまでの余裕はなかった。それどころか逆に、上にメンバーを吸い取られる結果となってしまったのが、あの無情な新体制発表でした。
カン娘。時代も含めて不慮の卒業や脱退が続く悲運のグループだけど、昔りんねが好きだった自分は、おぜこに当時のりんねを重ねてしまいます。山木さんが里田まいなのか……ちょっとわからないけど、消えかけたグループの火が数年を経て再び灯ったように、細々と活動を続けながらまた不死鳥のように大きく「舞」い戻る日がもう来ないとは誰にも言い切れないのです。