D=下山ワタル
CL=harmonize
2009.6〜2019.7
音楽教師/指揮者の藤井和夫さんが主宰する吹奏楽団harmonize(ハーモナイズ)が毎年6〜7月に開催する、吹奏楽チャリティーコンサートの告知フライヤー。2009年からコロナ禍前の2019年まで計11回のデザインを担当した。第10回までは、ぼく自身がアートワーク(イラスト)も含めて担当し、11回以降は外部のイラストレーターなどに依頼して進める予定だった。
藤井さんとは、ぼくが音楽事務所(ファイブ・ディー)に勤務していた頃、音大生としてヒートウェイヴの丁稚(ローディー見習い)をしていたのがきっかけで知り合った。
先方から渡されるスローガンをもとに(後年はとくにテーマを定めず)、毎回異なるモチーフでデザインした。アートワークの内容についてとくに先方から直しが入ることもなく、自由に任せてもらえた。フライヤーのほかに当日配布されるプログラムと、楽団員が着用するTシャツのデザインも手がけた。
なお、初回から会場内に募金箱が設置され、来場者からの募金を児童養護施設の出身者を支援する「NPO日向ぼっこ」に毎回寄付している。
第1回(2009)=藤井さんの教え子を中心に結成されたharmonizeと、社会人の楽団foglightの合同コンサートとして初開催された。クラシックのコンサートフライヤーは、会場の写真を主体とした黒基調のものがほとんどだったので、あえて白基調で楽器のイラストを散りばめた、明るくカラフルなデザインにした(このテイストはこれ以降も守られた)。
第2回(2010)=彼らの練習場の中学校のそばにある河原から見上げた空の写真を使用し(撮影は藤井さん)、飛行機雲風のロゴと組み合わせた。
第3回(2011)=東日本大震災の直後だったので、険しい社会の空気を緩和するように、シンプルな切り絵でスローガンの「ひだまり」を表現した。
第4回(2012)=楽団のメンバーが演奏を通して表現している「吹く」こと「叩く」ことを、実際に水彩絵の具を吹いたり叩いたりして表現した。震災から一年を経て、鎮魂や花火のイメージも少し込めている。アートワークに使った手書き文字などのモチーフは、以前デザインした100s(中村一義のバンド)のウェブサイトのために作った素材のリユース。
第5回(2013)=活動5周年を記念し、練習中のメンバーを撮影した写真を使ったデザインにした(PH=宮沢響)。ト音記号をモチーフにした、新たなバンドロゴも作成した。
第6回(2014)=ハーモニーを「重ねる」こと、そしてそのプロセスを、水彩クレヨンを使って表現した。ひとつひとつは不完全でつたなくても少しずつ重ねていくことにより、だんだんと統一されたひとつの像が浮かび上がってくる。
第7回(2015)=これまであえて避けていた「黒」の表現を取り入れて、「ユーフォニアムの迷路」を手描きで表現した。実際には迷路ではなく一本道で、たどって行くと必ずゴールに到達する。
第8回(2016)=指揮棒から線香花火のように音符が弾ける様子をイメージしたアートワーク。
第9回(2017)=手描きの線と色鉛筆でいろんな「五線」(=ハーモニー)を表現した。五線が常に平行である必要はなく、自由でよいとの思いを込めた。最後の「e」の絵は、別れや卒業(メンバーがそれぞれの事情で楽団や音楽から離れていくこと)を表しているが、実際に自分自身もこの第9回で一連のデザインの仕事から離れようと考えていた(その後撤回した)。
第10回(2018)=楽団の結成10周年をお祝いする「花束」のイメージ。「We are harmonize」のキャッチコピーで、10年変わらない「居場所」「帰属する場所」を表現している。花の素材は、第一回のフライヤーで使ったもの(左上)からの引用である。
第11回(2019)=この回から自分が関心を持つイラストレーターやクリエイター(自分自身も含む)に作品をお願いしていくことになり、その初回として屋宜加奈美さんのアートワークを起用した。元々は別の目的で描かれ、妻が購入して家に飾っていた小さな作品だった。