D=下山ワタル
IL/LOGO=村上康成
CL=みんなともだちプロジェクト(中川ひろたか)
2011.7
みんなともだちカロム
(みんなともだちプロジェクト)
ゲーム盤のカロムを、中川ひろたかさん提唱の「みんなともだちプロジェクト」の一環により、東日本大震災で被災した福島県いわき市で製造することになり、盤面のデザインをお手伝いした。
盤面のラインとコマを、村上康成さんが描いたプロジェクトのロゴ(福島の鳥キビタキとオオルリ)の2色で塗り分け、さらに福島県いわき市製であることを示す「MADE IN IWAKI, FUKUSHIMA」の文字をデザイン途中で加えた。製造に関わる人々に誇りを持ってほしいこと、カロムで遊ぶ人々にも福島のことを忘れずにいてほしい、という思いを込めた。制作進行と販売は、いわき市にあるみんなともだちSHOPが担当。販促のためのチラシも制作した。
盤面のデザインは、中川さんが学研と共同開発した「おはじきカロム」(学研盤)のレイアウトを継承しつつ、国内の競技で使われる彦根盤カロムの特徴をブレンドした。センターサークルに設けられた12個のマルのおかげで、少ないパックでもプレイが可能で、大人から子どもまで楽しめるようになっている。
プロジェクトやカロムについての福島テレビの取材が地元のニュースで放映され、ぼくも短い間だが中川ひろたかさんと一緒に出演した。本記事の末尾に、2011年に中川ひろたかさんとともに福島県いわき市を訪れた時のレポートを記しておく。
MADE IN IWAKI, FUKUSHIMA
2011/06/28
中川ひろたかさんが主宰する被災地支援プロジェクト「みんなともだちプロジェクト」の一環により、古くから伝わるカロムというおはじきゲームの盤を、福島県いわき市で製造して全国に向けて販売することになり、そのデザインを依頼された。いわき市の小学校や公民館などを中川さんが訪れ、歌と遊びと絵本読み聞かせをするツアー「中川ひろたか in いわき」のタイミングに合わせてカロムの試作品が完成すると聞き、被災地の子どもたちがカロムで遊ぶ姿がどうしても見たくなり、無理を言ってツアーに同行させてもらうことにした。本当は日帰りで帰る予定が、いわきの居心地があまりに良かったため、もう一泊して二日間滞在することになった。
完成したカロムの試作品は上々の出来だった。いわきの設計業者が盤を設計し、ぼくが施したデザインをもとに、いわきの複数の工房で印刷〜盤の組み立て〜駒の製造を行ない、完成した製品が「みんなともだちプロジェクト」いわき支部から全国に向けて販売される。写真はまだ試作の段階のため盤全体にシールを貼った状態だが、完成品では、絵本画家の村上康成さんが描くプロジェクトのシンボル(福島に生息する鳥のキビタキとオオルリ)が、盤の板にシルクスクリーン4版による綺麗な色味で直接印刷されることになる。村上さんもきっと喜ぶに違いない。
シンボルの回りにはプロジェクトのロゴ(これも村上康成さん)と「MADE IN IWAKI, FUKUSHIMA」の文字。実はこの語句、ぼくが思いついて後から加えたものだ。福島の産物が出荷停止になったり出荷されても避けられたりする中、「福島製」のクレジットは、地元の人たちにとって必ず大きな誇りになるに違いない、と思ったこと。そして、このカロムで遊ぶ全国の人々にも福島のことを忘れないでいてほしい、という思いも込めた。用意されたカロム盤にさっそく子どもたちが群がって、思い思いに駒をはじいて遊んでいた。
いわき市内は、震災の爪痕がまだそこかしこに残されているものの、全体として復興に向けて歩み始めているようにみえた。中川さんが歌う「にじ」(♪きっと明日は いい天気)や「はじめの一歩」(♪かならず あさは おとずれるから)を聞きながら、ハンカチを取り出して涙を拭っているお母さんを何人も見かけた。校舎が津波で流された学校が、被災を免れた別の学校に間借りしているケースも多かった。そんな厳しい状況と隣り合わせにもかかわらず、ぼくが出会ったいわきの人々の顔は、大人も子どもも輝いて、希望の方に向かっているように感じられた。その姿に逆にぼくの方が励まされたりもした。
東京でメディアを通して見聞きするだけでは絶対にわからない、被災地の人々のほんとうの気持ちをたくさん知ることができたのが、旅の一番の収穫だった。今回出会ったいわきの人々とは、これからも引き続きグッズのデザインなどを通して交流していくことになると思う。
⎯⎯ みんなともだちカロムとは|みんなともだちSHOP